演奏の切れ目に、思わず話しかけた。
スペインの曲でしょうか
いや、オリジナルです
彼は低く通る声で答えた。
プロでいらっしゃる
いやいや、趣味でちょっと
それにしてはかなりの腕前である。
女性は何も言わず、ビールを口に運びながら微笑む。目もとに何本ものしわがき
らめいて、いっそう魅力的に見えた。飼い主のそばでのびのびとくつろぐ気高い
猫のようだ、と思った。
秋の日は駆け足を始めたらしい。影が長く伸びている。もっと聴いていたかった
が、礼を言って離れた。
私にもやがて訪れる人生の秋。あの二人のように満ち足りた時を持てるのだろう
か。
公園の木立はもうすぐ色づき、華やかなフィナーレを迎えることだろう。そのこ
ろにまたひとりで来ようと思った。
私のそばにいる 醉卧夕焼け 絢爛霞